Nikon F, NIKKOR-H•C Auto 50mm f2, FUJICOLOR PROVIA 100F @Oia
ミシュラン三つ星の基準は「それを味わうために旅行する価値がある卓越した料理」だ。サントリーニ島のイアという街にあるレストラン、Oia Vineyartには、まさにそんな価値の料理がある(もちろん、星は付いていない。そもそもギリシアのミシュランガイドがない)。
かなり奥まった路地の裏にある上に、入口もポツンとあるので、注意していないと通り過ぎてしまう。実際、昼間に前を通って、場所を確認したにも関わらず、夜にもう一度来た時は見過ごしてしまった。
できれば予約をした方がいい。実際、予約なしで訪れた時は、一杯で入れなかった。日を改めて、店頭に行って、夜からの席を予約した。少なくとも、スタッフは全員英語が喋れるようだし、対応はとても丁寧だった。
夏ならやはりテラス席だろう。日が暮れても、十分に暖かい。
このお店に限らず、ギリシアのレストランに入ると、まずパンが出てくることが多い。日本で言うところの突き出し(お通し)だ。ここでは、それに加えて、オーリブオイルが小さなお皿になみなみと入れられて出てきた。
衝撃はこのオリーブオイルから始まる。まず鮮度。さっき絞ったのかと思うような香り。パンに浸して、一口食べれば、なんとも形容しがたい旨味が口の中に広がる。こんなに美味しいオリーブオイルは食べたことがなかった。いや、そもそもオリーブオイルがこんな風に味わえるものだとは考えもしなかった。
感動のあまりパンを食べ過ぎている間に、スタッフがメニューを聞きに来てくれる。地元のワインを飲みたいと言うと、丁寧に一つ一つ説明してくれた。どのスタッフにも、地元愛と、美味しいものを提供したい、という熱意を感じる。
もちろん、オススメの赤ワインをいただいた。残念ながら名前を失念してしまったが、口当たりよくスイスイと飲めるワインだった。
前菜は2品。メインも2品。最も衝撃的だったのが、メインの一つ、うなぎだ。ギリシャでうなぎ?と疑問に思うものの、レストランでは最初に目に止まったメニューを頼むと決めている。これが大当たりだった。人生で最も美味しいうなぎだったと断言できる。
あまりの美味しさに、写真も撮っていない。お皿に、大きめのうなぎの切り身が4切れほどのっていただろうか。なんだかわからないけども美味しいソースと、どういった調理をされたかはわからないけども絶品のうなぎが、目の前にサーブされたと思ったら、もうなくなっていた。気づいたら、オリーブオイルも、パンも何もない。ただ、圧倒的に美味しかったという体験だけが残る。
これで、二人で45ユーロくらい。結局、美味しいものは値段ではなく、鮮度なのだ。このレベルを、例えば東京のレストランで食べたら、値段は2倍以上だろう。
惜しむらくは、この衝撃的なオリーブオイルを買って帰れなかったこと。このお店は、レストランの中で食材等を販売しているのだが、このオリーブオイルは、レストランがまとめ買いしたものが巨大なタンクに入っているらしく、小売はしていないとのことだった。
安くて美味しい、でも、そこでしか味わえない。それが、感動する食事の条件だろう。